Q1 交通事故によるケガは治りましたが、めまいが続くため不安です。 原因に何が考えられるでしょうか?
A1

交通事故による頭や首への衝撃によって、めまいやふらつきが生じることは珍 しくありません。しかし、ほとんどの場合、1ヵ月以内に治ります。
交通事故後のめまいとして最も頻度が高いのは、「良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい症」です。内耳(ないじ)に存在する耳石(じせき)が半規管(はんきかん)内に入り込むことによって生じると考えられています。寝たり起き上がったりお辞儀をしたりといった動作によって回転性のめまいが生じます。これらのほか、内耳の外リンパが中耳(ちゅうじ)に漏出する「外リンパ瘻(ろう)」や、頸椎(けいつい)の靭帯(じんたい)・椎間板(ついかんばん)・関節包(かんせつほう)・筋肉・筋膜の損傷によって生じる「外傷性頸部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」(いわゆる、むち打ち症)、さらに、強い頭痛や吐き気も認められる場合には「脳脊髄液(のうせきずいえき)減少症」も念頭に置いておく必要があります。また、事故による不安や精神的ストレスはめまいの増悪因子となります。

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Q2 どのような検査をして診断するのですか?
A2

最も重要なのは問診です。交通事故が起こったときの状況、めまいの性状・持続時間、めまいが起こるきっかけや増悪因子、随伴症状(頭痛、吐き気、首 の痛み、難聴、耳鳴り)などです。これらに関するメモ書きを持参すると診察の際にスムーズに話すことができます(参考:めまいセルフレポート)。 めまいがあるととても不安になります。そういった不安感もきちんと主治医に伝えましょう。
問診の結果、上述した良性発作性頭位めまい症が疑われる場合には、頭位の変換によって生じる眼球の動きを観察するために眼振(がんしん)検査を行います。また、外リンパ瘻が疑われれば、CTのほか、聴力検査や耳に圧力を加えることによって眼振が誘発されるかどうかをみる瘻孔(ろうこう)症状検査が必要になります。外傷性頸部症候群や脳脊髄液減少症の診断には、頭や首のMRIおよびMRA、脳槽(のうそう)シンチグラフィーなど画像診断が必要になることがあります。

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Q3 A1.の場合、どのような治療をするのですか?
A3

良性発作性頭位めまい症:通常、放置しても自然に治ります。 しかし最近は、本疾患に対しては半規管に入り込んだ耳石を前庭(ぜんてい)に排出するための頭位治療が考案され、治るまでの期間を短縮するのに役立っています。自己判断で行うことは危険ですので、耳鼻咽喉科の先生に行ってもらいましょう。
外リンパ瘻:治療の第1選択はベッド上安静です。外リンパが漏出してくる穴が自然閉鎖するのを期待します。ベッド上安静が保てない場合には、走らない、重いものを持たない、鼻をかまない、排便時に力まない、などといった点に気をつけながら経過観察することもあります。手術を行って外リンパが漏出してくる穴を塞がなくてはいけなくなることもあります。
外傷性頸部症候群(むち打ち症):急性期には安静が必要になります。対症的治療薬として鎮痛薬、消炎酵素薬、筋弛緩薬などを用いる場合もあります。急性期を過ぎれば種々の理学療法が行われることがあります。しかし残念ながら決め手となる治療法がないのが実情です。
脳脊髄液減少症:減少した脳脊髄液を補うとともに損傷された髄液漏出部位の自然閉鎖を目的とする2週間程度の安静と水分補給(飲水、点滴)が第1選択となります。改善がみられない場合に、脳脊髄液の漏出部位に自分の血液を注入する「硬膜外自家血注入法(こうまくがいじかけつちゅうにゅうほう)」を行うこともあります。ただし、本治療は、まだ保険適応外の治療となっています。
治療内容は各医療施設により異なりますので、詳しくは主治医にお尋ねください。

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