Q1 どういうときに、めまいのリハビリテーションは行うといいのですか?
A1

私たちが直立姿勢を保つためには、三半規管や耳石(じせき)といった前庭(ぜんてい)器官からの情報(頭部がどのくらい傾いているか、頭部がどのくらい回転しているか)や、眼からの情報である視覚情報、筋肉や関節といった深部知覚情報が重要です。
前庭神経炎一つでも、情報のバランスが崩れると姿勢を保てないなどの病気で前庭器官からの情報が急に失われてしまうと、直立姿勢が不安定になるとともに、頭を動かしたときや急に振り向いたときなどに視線が安定せず、浮動感が残り、気分が悪くなります。
それでも、大半は自発的な適応能力により徐々に軽快しますが、患者さんによっては、このような症状があらわれるのを恐れて頭部運動や日常生活の活動を制限してしまうことがあります。その結果、頭部を動かしたときにクリアに物をとらえるメカニズムを損ない、頭部運動時の姿勢が不安定になるため、めまい症状がなかなか軽快しません。
このようなケースには、めまいのリハビリテーションが有効です。

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Q2 めまいのリハビリテーションにはどんなものがありますか?
A2 頭位ならびに体位を前後左右に変換する運動、前方に設定した離れた2点を眼と頭部を一緒に動かしながら見つめる協同運動、両足あるいは片足で立位を維持する運動、その場での足踏み運動、階段や踏み台の昇降運動、円を描くように歩く円周歩行運動などがあります(参考:当科でのめまいリハビリテーション内容一覧)。
 

担当医が患者さんの状態を評価し、必要な項目を選択するので、それらの運動をご自宅あるいは入院先で、1日2〜3回、1回につき15〜30分程度、最大能力の50%くらいで行います。決して100%の力で行わず、ふらつきが強いときは杖や椅子などの補助器具を使用しながら行います。最初はゆっくりと、徐々に強く、速く行うようにします。強すぎると転倒したり、吐き気などの自律神経症状によりリハビリテーションの継続が難しくなってしまうこともあるので、無理のないよう行います。
また、まわりの安全には注意し、リラックスした状態で、できるだけ毎日行うことが重要です。2週間に1回は担当医や担当理学療法士の診察を受けるか、あるいは電話などで連絡をとり、リハビリテーションの進み具合を相互にチェックします。そうすることで、患者さんのリハビリテーションへの意識と意欲が高まり、治療効果の向上につながります。

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Q3 自分でできるめまいのリハビリテーションはありますか?
A3

健康な方では、頭部を回転させたときにその回転と反対の方向に眼を動かそうとする反射(前庭眼反射)が本来備わっているため、頭を動かしても景色が揺れて見えるようなことはありません。しかし、片側に前庭障害がある患者さんでは、頭部を速く動かしたときにめまいがする、あるいは動作時の浮動感を訴える場合があります。前庭眼反射が低下している場合が多いので、その反射の適応を促す目的で、開眼での頭部運動や、前方の1点を見つめながら頭部を動かす運動や、前方に設定した離れた2点を眼と頭部を一緒に動かしながら見つめる協同運動を行います。
また、歩いているときに浮動感が強く不安感を伴う患者さんは、こうした運動に加えて、立位での頭位ならびに体位を前後左右に変換する運動を行います。可能であれば、片足立ち運動、階段や踏み台の昇降運動を行い、下肢の筋肉や関節などからの入力を強化します。こうしたリハビリテーションはご自宅の比較的安全な場所で行うことができます。
(参考:当科でのめまいリハビリテーション内容一覧

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Q4 めまいのリハビリテーションは
いつ始めて、どのくらいの期間行えばいいですか?
A4 めまいのリハビリテーションの開始時期は、めまい発症後、できる限り早い時期から始めるのがよいのですが、あまり早い時期からリハビリテーションを始めてしまうと、めまい発作時と同様の吐き気などがあらわれる場合もあるので注意が必要です。
 

また、片側に前庭障害がある患者さんの80〜90%は、めまいのリハビリテーションによって半年以内に症状は消失します。また、リハビリテーションによって症状の消失が得られた後も、継続してリハビリテーションを行うことで、安定した状態が得られます。
一方、両側の前庭障害がある患者さんでは、歩いているときなどに景色が揺れるなどの強い平衡障害がみられます。リハビリテーションは両足あるいは片足での直立運動から始め、Q3で述べた眼と頭の協同運動などで、下肢や目からの入力を強化することによって、1年以上のリハビリテーション継続により50〜60%の患者さんで症状の消失が可能です。

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Q5 メニエール病に対して有効なリハビリテーションはありますか?
A5

おくすりメニエール病に対しては、めまいのリハビリテーションを積極的に行うことはありません。通常、メニエール病では、片側の内耳(ないじ)のみに異常がみられますが、ときに両側に発症する場合もあります(両側メニエール病)。こういった両側メニエール病の患者さんや難治性のめまい発作のために手術を行った後で平衡障害が残存してしまった方には、めまいのリハビリテーションが有効です。
反復するめまい発作が特徴であるメニエール病の治療では、循環改善薬や浸透圧利尿薬などが使用されていますが(参考:めまい治療の実際)、さらに、予想されるめまい発作に備え、頭部運動や頭位変換などを行うことで、めまいに対する不安やハンディキャップを軽減できる可能性があります。

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