Q1 高齢者に多いめまいはありますか?
A1 年齢と末梢性めまい(内耳(ないじ:耳の中の感覚器)などに原因のあるめまい)、中枢性めまい(小脳、脳幹など中枢神経系に原因のあるめまい)の出現頻度との関係をみると、0〜60歳までは末梢性めまいが多く、60歳代で末梢性めまいと中枢性めまいの頻度は同等になり、70歳代以上では、中枢性めまいの頻度が増加するという報告があります。
 

高齢者のめまいの原因疾患としては、椎骨脳底動脈循環不全、慢性脳循環不全、小脳出血・梗塞、ラクナ梗塞などの脳循環障害に関する病気が多く、その他に末梢性めまいとしては良性発作性頭位めまい症など、また薬物による中毒性のもの、変性神経疾患、硬膜下血腫、一部の脳腫瘍、糖尿病、甲状腺機能低下症、頸椎症(頸性めまい)、うつ状態、心因性めまいなども多いといわれています。

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Q2 高齢者のめまいは
どのようなことに気をつければよいのでしょうか?
A2

からだの平衡(バランス)の保持には、筋肉の収縮の具合や関節の曲げの程度を感知する深部感覚系、目から入ってくる情報(垂直なものは垂直に、水平なものは水平に認識できているか)を感知する視覚系、内耳(ないじ)の耳石器(じせきき:頭部がどのくらい傾いているかを感知する)三半規管(さんはんきかん:頭部の回転感覚を司る)からの情報を感知する前庭系などが関与しています。これら3つの情報が小脳、脳幹などを中心とした中枢神経系に集まり、処理されて反射的に適切な姿勢を保つことができます。
高齢者のめまい しかし高齢者では、加齢に伴う感覚器や中枢神経系の退行性変化により、各系からの正確な情報量の減少や、中枢神経系の情報処理能力の低下、さらに誤った情報が加わるなどによりからだの平衡保持能力が衰えると考えられています。
年齢別に耳石器の感覚細胞密度を調べたわれわれの研究では、60歳代後半で同細胞密度が有意に減少することがわかりました。同細胞密度の減少やどの部分の細胞密度が特に減少しているかを調べた結果、予想される症状は、頭の傾きが軽度のときにはその傾きを感知しにくく、傾きが大きくなって初めてそれを感知できるというものでした。さらに、姿勢を保持するための体幹や下肢の筋力や関節可動性の低下がみられたことからも、一度バランスが崩れると制御しづらくなり、また転倒につながる可能性が非常に高いといえます。したがって、日頃から適度な運動をしてからだを鍛えておくことも重要です。(参考:めまいと上手につきあうために:日常生活で心掛けること)。
また、Q1でお答えしたとおり、高齢者のめまいでは中枢神経系に原因が存在する可能性が多くなります。脳梗塞などの脳循環障害の前兆としてのめまいでは、生命の危険も存在しますので、神経内科、脳神経外科へもあわせて受診しておくことが重要です。

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Q3 70 歳になる母が前庭神経炎を患い、退院はしたのですが
その後もめまいがたびたび起こります。
病院では特に異常がないといわれたのですが、
どうしたらよいのでしょうか?
A3 前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)は、突発的に出現する激しい回転性めまいで、蝸牛(かぎゅう)症状(聴力の低下、耳鳴、耳閉塞感)を伴わない一群の疾患で、前庭神経に病因を持つと推定されています(参考:まんがで読む疾患エピソード(前庭神経炎))
 

この病気は、一側の前庭系(平衡機能をつかさどる系)の機能が高度に障害されることが多いため、回転性めまい症状がおさまった後も浮動性のめまい(歩行時のふらふらするめまいなど)や頭の位置を変えた時の回転性めまいが反復することもあります。一度低下した前庭系の機能はなかなか回復しませんので、治療としては中枢神経系(小脳・脳幹など)の代償による症状の改善に期待します。当院では、めまいの治療として平衡訓練(めまいのリハビリテーション)を行っており、プログラムされた一連の運動・動作を毎日定期的に行うことにより浮動性めまいの改善や日常の身のこなしがスムーズにできるようになることが期待できます。
高齢者のめまい 特に高齢者ではQ2でもお答えしましたが、加齢に伴う退行変性で、もともとからだのバランスの保持は不得意ですので、このような高齢者の前庭神経炎の急性期のめまいの後に続く浮動性めまい(ふらふらしためまい)は若年者のそれと比べて症状が重くなりがちです。中枢神経系の代償を亢進させるためには、残された他側の前庭機能と中枢神経系の機能を十分に使い、平衡訓練(めまいのリハビリテーション)が重要な治療となります。

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